第一志望の早稲田大学文化構想学部に現役合格した子との最後の授業で、勝因は何だったのかとか、大学でやりたいこととか、たくさん話してもらいました。
彼女の授業を始めたのは、2022年の春。
初めは英検準1級対策をしました。
長文は自力では正確に読めていないし、英作文もミスだらけで、「これは基礎文法(一部は中学英語から)のやり直しが必要だな」と思ったのを覚えています。
彼女が素晴らしかったのは、非常に素直だったことです。やるように言ったことは確実にやってくれました。
時間効率を考え、準1級の単語帳には一切手を出さず、2級の単語を完璧にすることを目指しましたが、本当に完璧にしてくれました。
毎回の授業で一緒に読んでいた長文も、きちんと納得できるまで質問をたくさんしてくれました。
英検準1級の長文はすぐに正確に読めるようになりました。
一般受験対策を本格的に始めたのは、指定校推薦の結果がダメだった後でした。それまでは授業では定期テスト対策もやっていましたので。
メンタルがブレブレになることが頻繁にあり、決して順風満帆な受験生活ではなかったと思います。
秋以降も、過去問が時間内に解けないことを悩んでいました。
ただ、多少時間オーバーでも、時々8割近い正答率が出るようになっていたので、これはいけるのでは?と内心思っていました。
本番は、「試験を楽しもう!」という気持ちだったそうです。
普段の授業でも、一緒に英文を読みながら、内容について色々考えたことを話し合うことがあったのですが、本番でも、英語だけでなく国語も、色々考えながら、共感しながら読んだそうです。それが結果につながったんでしょうね。
やはり、書かれていることに共感したり、そこから学ぶ気持ちがあれば、内容もしっかり頭に入ってくるので、得点につながりやすいですよね。
読解できるかどうかがゴールになると、どうしても浅い理解になってしまいますから。
英検2級の単語も怪しかった状態から、2年弱でここまでの伸びはすごいと思いました。
文化構想の問題は、英検準1級よりはるかに難しいですからね。本番の英語は自己採点で78パーセントだったそうです。見事です。
この子の2年間の英語力の伸びは素晴らしかったのですが、その理由の1つは、国語力が高かったことだと思います。
もちろん、単語を覚えたり、文法を理解したりといった勉強もきちんとやっていくことが大前提です。
ただ、同じように単語を覚え、文法の練習をしていても、生徒さんたちの英語の成績の伸びには本当に差があるんです。
これは、残酷ですが事実です。
肥沃な土壌には養分や水を与えればしっかり植物が育ちますが、やせた土地にはどんなに養分や水を与えてもなかなか育たない。
それくらい差があるのです。
なかなか結果が出ない子の中には、サボっていて養分や水を与える作業をしない子と、そもそも基礎となる土壌が植物を育てられるほど準備ができていない子がいます。
前者は何とか単語を覚えるように促したり、宿題をたくさん出したりすれば結果につながりますが、後者は厳しいです。土台となる国語力が低いので、英語の文法を理解することも、英文の内容を理解することも、他の人の5倍、10倍と時間がかかることがあるからです。
この生徒さんは、幼少期から、毎晩寝るときに、お父さん、お母さんと並んで本を読んでいたそうです。
お父さん、お母さんが読書をする姿を見せるから、子供も自然と読書をするようになったのです。
子供に勉強させたかったら、大人がその姿を見せること。やはりこれが一番効果があるように思います。
小さいときはスマホもなく、他に娯楽がなかったために、本の世界にどっぷりつかるようになったようです。
塾で国語の読解問題を小学生のころからやっている子はたくさんいますが、やはり、本1冊と真剣に向き合うのとは違いますよね。国語の問題は本の抜粋ですから。本を普段から読んでいる子は、文章を理解するスピードも速いし、また持久力もあり、想像力も豊かです。
彼女は英語の文法の勉強をしている時も、「この表現とこの表現の違いは何ですか?」という感じで、他の子が気にしないような細かい部分も気になるようで、たくさん質問をしてくれました。言語に対する感覚が鋭いな、と思っていました。
彼女は大学生活でも、語彙力を高め、表現力をつけたいと思っているそうです。
読書をすれば必ず成績が良くなるというわけではないと思います。読書習慣がなくても成績が良い子ももちろんいます。
でもやっぱり読書が習慣となっている子は、肥沃な土地がどんどん水や養分を吸収するように、知的好奇心があり知識が豊富だし、何だか話していて面白いな、と感じることが多いですね。